陛下、たとえあなたに「ぼくらの間に愛などない」と宣言されたとしても、事故死する運命を避けることが出来なくても、私はあなたを愛し続けたいのです
 庭園から宮殿内へ、大廊下をスキップせんばかりに軽快に進む。

 途中、侍女や執事や官僚などと行きあったけれど、だれもがびっくり顔をしていた。

 それがまた面白い。

 全員、端によって頭を下げ、挨拶をしてくれる。

 いつもだったら、だれにでも気おくれしてしまうからおずおずとうなずいていた。とてもではないけれど、言葉を発することなんてムリ。挨拶を返すとか気候や何気ない話をすることなんて、わたしにはハードルが高すぎる。

 子どものときに妃教育が始まって以来ずっと宮殿ですごしているのに、いまだに他人(ひと)とうまく接することが出来ずにいる。お付きの侍女でさえ、うなずいてみせるのが精一杯。
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