陛下、たとえあなたに「ぼくらの間に愛などない」と宣言されたとしても、事故死する運命を避けることが出来なくても、私はあなたを愛し続けたいのです
 なんてことかしら。いつもだったら、理由をつけては彼の前から逃げていた。彼を想うあまり、会話を交わすどころか彼の前に立っていることすら困難だった。それなのに、いまはこうして彼の前に立ってその美貌を見つめることが出来る。

「陛下、ご挨拶申し上げます」

 ドレスの裾を上げようとして、乗馬服であることを思い出した。

「まあっ、いやですわ。わたしったら、つい癖で」

 おもわず笑ってしまった。
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