Cherry Blossoms〜黒に咲く紅〜

「クラウディオさん、でしたよね？どうされたんですか？」

桜士が訊ねると、クラウディオは「少し困ったことになってね」と頰をかきながら言う。困ったこと、と桜士が首を傾げるとクラウディオはゆっくりと説明をする。

「実は、pigeonの方でちょっと問題が起きてね。診療所がない場所へ行くのがpigeonの役目だ。だけど、pigeonのメンバーが参っている村があってね、もう今月で何人も看護師たちが辞めてるんだ。だから、君たちにpigeonの手伝いを頼みたくてね……」

「えっ？」

予想外の言葉に、桜士は驚いて声を出してしまった。



クラウディオが一花たちにpigeonの手伝いを依頼してから数日後、桜士は医療器具が入ったかばんを手に待ち合わせ場所である浅間総合病院に来ていた。その隣には、一花とヨハンの姿もあった。

「お二人とも、こういうお手伝いをすることがあるんですか？」

前代未聞のお手伝いに、まだ戸惑いながら桜士は訊ねる。ヨハンはため息を吐いただけで答えず、その態度に一花が彼を軽くつねってから言った。