Cherry Blossoms〜黒に咲く紅〜

淡々と慎之助が言い、彼が指差した白い大きな車に桜士たちは乗り込む。

「今日は、よろしくお願いします！！」

一花がそう笑いかけ、頭を下げた。桜士ならばその笑顔の可愛らしさ、そして丁寧に頭を下げてくれたことに胸が高鳴り、顔が赤くなって動けなくなっているだろう。だが、二人の反応は違った。

「……こちらこそ、お願いします」

嫌でもわかるほど暗い。一花もそれに気付いたようで戸惑っている。淡々と鈴芽が言った。

「早く乗ってください」

まるで、牢獄に囚人を連れて行く車に乗せられるかのように重い空気が響く。慎之助がかけたエンジンの音、ラジオの音声、タイヤの音、それら全てがやけに大きく感じた。



車の中では、一花とアルオチ、そしてヨハンとオリバーの明るい話し声が響いている。だがそれは楽しく話しているのではなく、重苦しい空気を何とかしたいという気持ちからだとわかる声のトーンだった。

「仕事終わったら、みんなで何か食べ行かない？焼き肉とかどう？」とアルオチ。