Cherry Blossoms〜黒に咲く紅〜
ヨハンが桜士に手を伸ばしてきたため、桜士はすばやくその手を掴む。アルオチとオリバーが「おお!」と言い、ヨハンは悔しそうな顔を見せる。

「ヨハン、本田先生を敵対視するのいい加減やめなよ」

アルオチが呆れながら言い、一花が「すみません、本田先生」とペコリと頭を下げる。謝っていても、一花はとても可憐で美しい。

「いえ、大丈夫ですよ」

頰が赤くなってしまうのを必死に抑え、胸の高鳴りを感じながら桜士は答える。すると、それまで一言も話さなかった慎之助が口を開く。

「皆さん、そろそろ到着します」

東京から車でおよそ三時間半、ビル群はすっかり消えて辺りは雪の積もった山々に囲まれている。自然豊かな場所は心を自然と癒してくれる。窓の外の景色を桜士が見ていると、「黒羽村」という古びた木の看板が見えてきた。

「あの村の住民の健康診断を手伝っていただきます」

淡々と慎之助は言い、車は迷うことなく黒羽村へと入っていく。刹那、助手席に座っている鈴芽が制服のズボンを強く握り締めた。
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