Cherry Blossoms〜黒に咲く紅〜

好奇心旺盛な子どもを見ていると、自然と頰が緩んでしまう。桜士は、この子どもたちの笑顔を陰で守っているのだ。

（この子たちが笑って大人になれるように、未来を引っ張っていけるように、俺がもっと頑張らなきゃな……！）

桜士は幸せを感じながら、そう心の中で考える。チラリと隣を見れば、一花も優しげな目をしながら子どもたちを見ていた。

「可愛いですね」

桜士の視線に気が付いたのか、一花が話しかけてくる。桜士は「はい」とゆっくりと頷き、「子ども、お好きなんですか？」と訊ねる。

「大好きです！」

目を細め、幸せそうに答える一花に、桜士の胸がまた高鳴る。一花が「大好き」と言ったのは、目の前にいる知らない子どもたちだ。だが、まるで自分に告白をされたような気持ちになってしまう。

（ああ、やっぱり公安であってもこういう気持ちの制御はできないな）

桜士がそう思いながら作り笑いではなく、自然な笑みを浮かべていると、「フン！」とわざとらしく大きく鼻を鳴らす音が聞こえてくる。