Cherry Blossoms〜黒に咲く紅〜
「私たちは、そういうサービスをするためにここに来ているのではありません!検尿を済ませてください!もう他の方は終わりましたよ?」

「この、クソが!!」

武夫は一花に掴み掛かろうとするも、一花は後ろに避け、武夫の手は空気をスッと掴む。側から見ている桜士たちからすれば滑稽な姿だ。

「お前、医者か!!女の医者は性格が悪くて嫌なんだ。男より上に立ちやがって。男を立てることを忘れるなよ!!」

その言葉は、一花に恋をしている桜士にとって許しがたい言葉だった。素早く一花の隣に立ち、桜士は口を開く。

「お言葉ですが、今は女性でも医者として活躍されている方は大勢います。それに、男を立てろ、男より上に立つな、なんていつの時代の話をしているんですか?お喋りはあとにしてください」

潜入捜査官、常に冷静を求められる公安所属のはずだ。だが、桜士の心の中には怒りがある。他のことではポーカーフェイスや冷静を貫けても、やはり一花のことになると無理なのだ。
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