Cherry Blossoms〜黒に咲く紅〜

「あのね、あのね、うっ、ひっ……ひっ……湊ね、ケンちゃんたちと、ううっ、遊んでたの……！でもね、ケンちゃんが、池に、ひっく、落ちちゃって、プカって、浮かんだまま、なの……！うぇぇぇぇぇぇん！！」

池に浮かんだままーーー。その言葉に桜士たちは顔を見合わせる。危険な状態であることだけはわかる。

「すぐに行かねぇと！」

ヨハンがそう顔色を変えて言い、薫子の腕の中で泣きじゃくっている湊に池の場所を訊ねる。

「俺たちは医者だ。絶対に君の友達を助ける！だから、場所を教えてほしい……！」

「うん……！」

湊が泣きながらも口を開き、池の場所を言おうとしたその時だった。ドンッと大きな音が響く。

「お前ら、酌をするという役割を放って行くというのか！！ガキなんてどうせすぐまたできるだろう！！放っておけばいいんだ！！」

武夫が顔を真っ赤にしながら怒り、空になった酒瓶を投げ付けてくる。壁に当たった酒瓶は大きな音を立てて割れ、武夫の隣にいる鈴芽が「ひっ！」と悲鳴を上げた。