Cherry Blossoms〜黒に咲く紅〜
チラリと桜士が隣を見れば、慎之助も顔を真っ青にして震えている。急患が発生したというのに、まだこの二人は武夫に怯えているのだ。情けない、そう桜士が言おうとした時だった。

「酒なんて、赤ん坊じゃねぇんだから一人で注いで飲めるだろうが!!ふざけてんのか!!子どもはまたできるって言ったな?命は一つしかない。亡くなった人と同じ人なんて二度と生まれないし、探しても見つからない。軽々しく、んなことを口にすんじゃねぇぞ!!このゴミクズ野郎が!!」

ヨハンが武夫の胸ぐらを掴み、怒鳴る。その動作はまるで、獲物を狩る猛獣のように素早く、誰も止めることはできなかった。だが、桜士の心の中はスッとしている。

「ひっ、ひぃぃ……」

情けない声を上げてその場に座り込む武夫を、変わらずヨハンは睨み付けている。そんな中、オリバーが言った。

「武夫さん、でしたっけ?自分が世界の中心、王様だ、なんて態度は取らない方がいいですよ。子どもは二十年も経てば立派な大人になって、働いて、この国を引っ張っていく。だけど、あなたはどんどん弱って二十年後には棺桶の中なんですから」
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