Cherry Blossoms〜黒に咲く紅〜

オリバーは言いたいことを淡々と言うと、武夫を睨み付けているヨハンの手を引いて部屋を出て行く。

「一花、本田先生、行きましょう！」

アルオチが声をかけてきた。桜士は頷き、アルオチの後に続く。だが一花は何故かその場から動かなかった。

「四月一日先生？」

桜士が訊ねると、一花は「すぐ行きます。ですが……」と言いながら慎之助と鈴芽を見つめる。ピンク色の可愛らしい唇が開かれた。

「Dr.奥田、Ns.山村、あなたたちはいつまでそうしているつもりですか？こちらの言うことを聞かず、セクハラ・パワハラを繰り返し、医師や看護師の仕事とは全く関係ないことを強要する人たちにいつまで付き合っているんですか？あなたたちの医師免許、看護師国家資格はただの紙切れですか？あなたたちはこんなことをするために、ここに来ているんですか？」

一花は真剣な顔でそれだけを言うと、二人の返答は聞かずに部屋を出て行く。一花の表情や言葉に見惚れていた桜士も、慌てて後を追った。