Cherry Blossoms〜黒に咲く紅〜

優しく、どんな患者にも丁寧に接する本田凌を意識して言う。女性たちが何人も頰を赤く染め、騒ぎ声は次第に収まっていった。その時である。

「大丈夫ですか！？」

一花の大きな声が桜士の耳に入る。声のした方を見れば、一花が一人の女性に声をかけていた。女性は意識を失っているようで、グッタリとしている。

「どうしたんですか！？」

桜士も駆け寄る。一花はエコーを取り出し、液を塗りながら言う。

「意識がずっとあったのですが、突然倒れて……。どうやら内臓に傷がついてしまっているようです！」

女性の体にはほとんど外傷は見られない。だが、外傷がなくても内側に傷がある場合もある。そのため、交通事故に遭った際は必ず病院を受診しなくてはならないのだ。一体どこに傷があるのか、人の目ではわからないこともある。

一花がエコーを当て、体の中を見ていく。そしてある一点の場所でエコーが止まった。

「ここ、脾臓が傷付いています！すぐにオペが必要です！」