Cherry Blossoms〜黒に咲く紅〜

ヨハンは真剣な顔で慎之助と鈴芽を見つめた後、手を差し出す。

「あんたらを苦しめているあいつらは俺たちに任せろ。その代わり、その男の子のことを任せる」

「はい！」

慎之助と鈴芽はヨハンの手を握り、救急車に乗り込む。サイレンを鳴らしながら走っていく救急車を見届けた後、一花が呟く。

「じゃあ、行きましょうか」



屋敷に戻ると、玄関に一歩足を踏み入れただけで遠くからドンドンと暴れているような足音や、何かが壊れる音、そして甲高い悲鳴と、誰かが必死に宥めているような声が聞こえてくる。

「癇癪起こした子どもかよ」

オリバーが呆れたように言う。先程ヨハンやオリバーが言った言葉は、彼には届かなかったようだ。

「あの、四月一日先生。武夫さんたちをどうするつもりですか？」

話をしてもきっと彼らはわかり合える存在ではない。これは、もう屋敷に入った直後に桜士が気付いたことだ。一花に質問すると、一花は少し暗い顔をしていた。