Cherry Blossoms〜黒に咲く紅〜
「なるべくなら、この方法は取りたくなかったんですが……」

「ああ、あれを言うのね」

アルオチが納得と言いたげな表情を見せ、ヨハンも「あいつらなら仕方ねぇよ」とあくびをする。一体、何を彼女たちは言おうとしているのだろうか。

奥の部屋へと近付くにつれて、音と怒鳴り声は大きくなっていく。怒鳴り声の主は当然武夫だ。

「あのクソ医者共め!!訴えてやるぞ!!」

「お義父さん、もうやめてください……。湊も怖がっています」

「何だと?嫁のくせに生意気だな!!」

「ひっ!」

ガシャン、と何かが割れる音がまた聞こえた。それと同時に湊の泣き叫ぶ声が聞こえてくる。桜士たちに緊張が走った。

「……俺が開けます」

桜士が襖に手をかけ、警戒しながら勢いよく襖を開ける。そこにあったのは、まるで廃墟かと思うほど散らかった部屋だった。あちこちに割れた酒瓶の破片が飛び散り、まだ蓋を開けたばかりであろう酒瓶が倒れて酒が畳に広がり、おつまみもあちこちに散乱している。
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