Cherry Blossoms〜黒に咲く紅〜
「誰もいませんね」

車を降り、一花が微笑む。その顔にまた胸がキュンと音を立てる。

「そうですね。貸し切りです」

ザザッと波が音を立てる中、桜士と一花は夜の砂浜を歩いた。昼間の賑やかな海とは違い、夜は静かで波の音や風の音がやけに大きく感じる。

「ここで食べませんか?ハンバーガー」

一花がそう言い、チェック柄のレジャーシートを砂浜に敷く。桜士も「そうですね」と言い、レジャーシートの上に座った。そして、買ったハンバーガーを手渡す。桜士はベーゴンエッグバーガーを、一花はアボカド焼肉バーガーを食べ始めた。

「患者さんには「栄養バランスのある食事を!」って言っている僕らがジャンクフードを夕食にしてるなんて、患者さんが知ったら色々言われそうですね」

「確かにそうですね。でも、ジャンクフードってすごくおいしくて罪な食べ物じゃないですか?ドーナツとか、フライドポテトとか、ケーキとか、ホットドッグとか、おいしいものばっかり!」
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