Cherry Blossoms〜黒に咲く紅〜

番外編ニ Curry rice

「どうぞ、召し上がれ」

桜士たちの前にコトリと音を立てて置かれたのは、湯気を立てているスパイスがたっぷり使われたカレーとナンである。運んできたのは、インド人薬剤師兼臨床工学技士のリティク・タゴールだ。

「わあ、おいしそう！」

「いただきま〜す！」

ヨハン、アルオチ、オリバーが口々に言い、カレーを食べ始める。一花も目を輝かせていた。

「ナンって食べるの初めて！いただきます！」

「おかわり、たくさんあるからな」

リティクがニコリと笑って言う。何故、インドのカレーを桜士たちが食べているのか、それは数時間前に遡る。



黒羽村にクラウディオから頼まれて行った五人は、東京に帰って来てからある話をしていた。それは、頑張ったのだからみんなでご飯を食べに行きたいという内容である。

「そういえば、村に向かう車の中でも話してましたね」

桜士が思い出して言うと、「そうよ！あんな村で頑張ったんだから食べ行きたい！」とアルオチが言う。他のみんなも何度も頷いていた。