Cherry Blossoms〜黒に咲く紅〜

「ヨハン、ありがとう」

手術室の中は緊張状態にある。だが、一花は手術台の上で眠っている患者も、手術を行う医師たちも安心させるかのようにふわりと笑う。マスクをしていても笑っているとわかる。

（笑った顔、やっぱり素敵だな……）

手術中だというのに、桜士の胸がトクンと高鳴った。



手術が無事に終わり、榎本総合病院に女性をドクターカーで搬送した時にはすでにお昼を過ぎていた。

「さっきの女性、助かってよかったですね」

廊下を歩きながら桜士は一花に話しかける。一花は安心したような表情を浮かべ、頷いた。

「はい、本当によかったです！これで安心してご飯が食べられます！」

「お前、さっきからお腹何回も鳴ってるからな〜」

ヨハンが揶揄うように笑いながら言うと、一花のお腹がグルルと音を立てる。お腹を押さえながら顔を真っ赤にする一花に、桜士は頰を緩ませていた。

「食堂のアジフライ定食、すごくおいしかったですよ！オススメです」