Cherry Blossoms〜黒に咲く紅〜

桜士が食堂で食べたメニューでおいしかったものを言うと、ヨハンがハッとした顔を見せ、負けじと口を開く。

「俺は、あれがおいしかったな！キムチ炒飯セット！デザートには季節のフルーツゼリーなんてどうだ？」

桜士とヨハンの間で、バチバチと火花が飛び散る。さて、一花はどちらを選ぶのか。お腹を鳴らしながら一花は言う。

「ああ〜、どっちもすっごく気になる！でも今日はカツカレーが食べたい気分なので、また明日にしますね！」

食事の話をしていると、お腹は自然と減っていく。特に好きな人と食べる食事は特別だ。何を食べよう、どんな話をしよう、そう思いながら桜士が歩きていると、前方から白衣を着た女性が歩いてきた。だがその顔色は悪く、足元もどこかおぼつかない。

「えっ、折原先生？大丈夫ですか？」

一花が一瞬にして心配そうな顔になり、彼女に駆け寄る。産婦人科医の折原藍（おりはらあい）は、いつも笑顔という印象の医師だった。だが今、彼女は暗い目をして笑顔はない。