月と桜とハイヒール
インターネットで調べて、自宅からも会社からも通いやすい場所にあるダンス教室を見つけた。
次の休日に体験教室に行ってみると、講師や他の生徒の雰囲気も良く、更衣室も清潔感があった。ここなら、と芽依は体験した当日に入会届を出した。
しかし、いくつか問題があった。
一つ目は社交ダンスを習うには、やはりそれなりの出費があること。二つ目は、社交ダンス用シューズのヒールの高さだ。
大会に出るほど本格的に習うつもりはないため、出費は最低限に抑えられる。しかし、シューズのヒールだけは慣れるしかない。
芽依は仕事の時でも、三センチヒールのパンプスを履いている。プライベートでは、パンツスタイルならばペタンコ靴のほうが多い。
そんな芽依には、五センチのヒールでもかなり辛い。しかも、ピンヒールとまではいかなくとも、一般的なヒールよりも細いデザインだ。
ラテン種目などになると、七センチ以上のヒールを履くことも多いらしい。とてもじゃないが、それは無理だ。
(まずはスタンダードのワルツだから、とりあえず五センチに慣れよう)
一度始めたことは、それなりに形にしたいタイプの芽依は何足か新しい靴を購入した。
仕事用の五センチヒールのパンプス。
そして、プライベート用は同じく五センチだが、歩ける範囲で細いヒールを選んだ。