王子は香水姫を逃さない
 「はい。エセン国のほうから人を雇い、新しい化粧品や香水などを仕入れ、こちらでも販売しております。」

 「何だと?エセンから。……アーサー王子、この店で貴殿の国の商品を売っているようだぞ。」

 ノエルをキースに任せたアーサーが、後ろから皇太子の横に出てきた。商品をじっと見つめている。

 ……これは。このポプリの袋は見たことがある。ロゼリアがくれたものに似ている。
 「皇太子様、私も商品をすべて把握しているわけではございませんが、我が国で作られたものにとても似ています。」

 店先でアーサーが話しているのを店の奥からじっとロゼリアは見つめていた。
 アーサー、変わらない金髪と美しい立ち姿。ロゼリアは彼に会いたい気持ちをおさえるのに必死だった。

 「女将、この香水は良い香りだな。いくつか種類があるようだが、母上にプレゼントしたい。どのようなものが良いだろう?」

 「皇太子様、お目が高い。今一番人気商品です。そうですね。王妃様はどのようなお花がお好きですか?」


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