王子は香水姫を逃さない
 「バラ園があるからバラかもしれないな。」

 「それなら、詳しいものに聞いてみましょう。バラは3種類あると言ってましたから。ロゼ、ちょっと教えておくれ。」
 
 サラが店奥のロゼリアに声をかけた。この城下では、ロゼと呼ぶように頼んであるのだ。

 とはいえ、どうしよう。しょうがない、隠れてはいられない。変装したし、きっと大丈夫。うん。

 「は、はーい。今参ります。」

 店先に出ると、涼しげな目元の美男の皇太子と大柄な軍人、愛するアーサー、その後ろにキースが見えた。

 「皇太子様にご挨拶いたします。」
 腰を折って、礼をする。皇太子はびっくりした顔をして、ロゼリアをじっと見つめている。

 「そなた、町娘にしてはきちんとした挨拶ができるようだな。」

 ま、まずい。いつもの癖で貴族を相手にすると素に戻ってしまった。
 「そうなんですよ、この子はね……。」

 「はい、母が貴族のかたにお仕えしておりましたので、少しだけ行儀見習いをしたことがございます。」

 サラに目配せして、これ以上話させないように会話に入った。
 
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