王子は香水姫を逃さない
 「では、お話を伺った感じでは、こちらのダマスクの香りのものが良いかと思います。いかがでしょうか?」

 皇太子に試しで香りをかいでもらうため、商品を手渡そうとした。

 すると、ロゼリアが商品を乗せている右手を、皇太子が商品と一緒にぎゅっと握ってきた。

 「えっ。あ、あの。失礼いたしました。」
 急いで、手を引いたが、皇太子は手を離さない。

 それどころか、左手でロゼリアの右手を握ったまま、自身の右手で商品を持ち上げた。

 「……うむ。良い香りだ。母上も喜ばれるだろう。それに、そなたからも良い香りがするな。」

 皇太子はロゼリアの右手を握ったまま、口元に持って行き、キスをするような仕草で手の香りをかいだ。

 ロゼリアは驚いて、固まってしまった。
 そばにいるアーサーは、先ほどから何も言わない。

 ただ、じっとロゼリアをにらむように見ている。

 ど、どうしよう。気づいてないよね。

 「はい、常に商品を作るため花を触っておりますので、香りが移ってしまいます。いろいろな花の香りが混ざっておりますので、あまり良い香りではないかもしれません。」
 


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
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