王子は香水姫を逃さない

 アーサーの叔母が亡くなった時に、妹姫のマリー様を嫁がせる話が大臣達の間で議題にあがったらしい。
 マリー様は16歳。社交界にデビューしたばかり。

 王様や王妃様もマリー様は一人娘だし、とてもかわいがっているという。 

 「バージニアで人質暮らしなど、幼い妹にさせられない。となれば、残る選択肢は第二王子である自分がバージニアに行くことしかない。この景色を見に来たのは、この丘から見える景色を心に刻みたかったからだ。
 そして君に……しばしの別れを言うためだ。だが、だめだな。君を見ると決心が鈍る。」

 アーサーは、私の肩をぎゅっと抱き寄せた。
 ほっとする、彼の香り。私があげたポプリを身につけてくれている。
 カモミールがほんのり漂った。

 「バージニアへ行くのですね。くれぐれもお身体に気をつけてください。お手紙書きます。

いつかお手紙をやりとりできなくなるかもしれないですが、私はいつまでもアーサー様のことを忘れません。」

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