王子は香水姫を逃さない
 「俺だとわかったのか?」
 「はい。以前おいでになった時と同じ香りがしております。すぐにわかりました。」
 
 皇太子は、ロゼリアに向かって手を差し伸べた。
 「ロゼリア伯爵令嬢。あなたを城に招きたい。王妃がこの間の香水を気に入られた。他の商品も見たいそうだ。」

 ロゼリアは皇太子をじっと見つめ、息をのんだ。今、伯爵令嬢とおっしゃった。どうして。

 「エセンの伯爵令嬢であることは、調べた。貴女のその気品と身のこなし、素性を隠せてはいない。すぐに貴族の娘とわかる。眼鏡を取るとまぶしいほどの美しさだ。すぐに街で噂になる。気をつけた方がいい。先ほどの男達だけでなく。」

 エリンは驚いて、小さな声でロゼリアに話しかけた。
 「姫様。どういたしましょう。登城出来るような準備は持ってきておりません。」

 「エリン、王妃様のお呼びとあればお断りするのは失礼です。」

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