王子は香水姫を逃さない
 「どういう意味だ。私が君を忘れるとでも?」
 
 「いずれ、王子様はバージニアの姫と結婚されると言われています。私はアーサー様を困らせたくない。」
 
 「あちらに一時的に住むが、必ずロゼリアの元に戻るし、君を正妃に迎えるつもりだ。あちらとは婚姻関係を結ばなくても、いいようにするから。」
 
 「何か方法があるのですか?」
 
 「いや、あちらに行ってから、足場を作り、説得する。私を信じて連絡を待っていて。必ず帰るから。」

 「……はい。お待ちしています。」
 アーサーは、私の長い黒髪をなでながら、キスを落とした。
 
 彼とこの丘で出会って、日時を決めて会う約束をするようになって、半年。
 彼が決心したように、私も決心していた。彼には伝えないけれど。
 
 「私以外の男を今後見てはだめだ。舞踏会は絶対に出席するなよ。伯爵にも君とのことを話しておく。私は本気だ。信じて待て。」
 
 アーサーは、約束するように、深い口づけと熱い抱擁を残して帰って行った。


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