王子は香水姫を逃さない
 
 部屋に入ると、続き間にある湯殿を使うようエリンが指示を受けた。
 ロゼリアはエリン以外の侍女にいったん下がってもらった。
 
 誰もいなくなったのを見計らってエリンが何かを差し出した。
 「姫様、キースからこれを預かりました。」

 見ると封筒を持っている。
 裏返すと封印に見慣れたアーサーの紋が押されている。
 「アーサー様からだわ。誰も見ていないわよね。」
 封を開けて、中を読んだ。

 『ロゼリア。この間は驚いたよ。会えて嬉しいけれど、僕に無断で来るなんて、次に会うときはお仕置きだからね。覚悟して。それから、時間がないから要件のみ伝える。皇太子にはあまり近づくな。笑顔を向けてはならない。約束だよ。近いうちに連絡を取る方法を考える。待っていてくれ。勝手なことはしないように。この手紙は焼き捨てること。』

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