王子は香水姫を逃さない
 そのとき、ノックの音がした。
 エリンが返事をすると、ドアが開き、皇太子が入ってきた。
 一瞬、立ち止まり驚いたように目を開いた。
 そして、ゆっくりとロゼリアに近づいてきた。

 「昨日までとは別人だな。本当に美しい。薄い紫色のドレスが君の上品さを際立たせて、良く似合っている。」
 「ありがとうございます。このような姿は久しぶりですので、粗相があるかもしれません。」

 「姫、では王妃の部屋へ行こう。商品は侍女に持たせよう。」
 ロゼリアの右手を恭しく持ち上げ、自身の左腕にのせた。
 皇太子はロゼリアをまぶしげに見つめながら歩き出した。
 
 王妃との謁見は、想像以上にスムーズに進んだ。
 
 「では、今日はこのティーローズの香水と、ラベンダーのポプリをオススメいたします。」
 「そうね。どれも気に入ったわ。貴女のオススメをもらっておきましょう。」

 王妃は気さくな人柄のようで、ロゼリアは安心して話をすることが出来た。
 商品を差し上げ、退出しようとしたが、止められた。

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