王子は香水姫を逃さない

 「ロゼリア姫。今度、公式行事の舞踏会があります。よろしければご招待いたします。」
 
 ロゼリアは驚いて、ひざまずいた。
 「王妃様、私は姫ではありません。エセンの伯爵家の娘ですが、商いもしております。貴族末席のものです。身に余るお誘いです。」
 
 王妃は不安げにロゼリアを見つめる皇太子を一瞥した。
 「私が招いているのです。その資格は十分にあります。ね、ディルク。貴方がエスコートしたいのでしょ?」
 
 王妃は皇太子に目配せし、安心させるようにうなずいた。

 「ロゼリア、私のエスコートでは不服かな。是非、この宮廷で君を見せびらかして、私のものだと自慢したい。」
 「あらあら、ディルク。彼女はあなたのものになったの?」

 「私のものになってほしいのです。いかがですか、母上。」
 「ふふふ。他国の姫ですからね。王様のご了承が必要ですよ。」

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