王子は香水姫を逃さない

舞踏会

 
 当日、馬車の迎えに乗り、同じ部屋に通されて、美しい赤色のプリンセスラインのドレスに着替えた。
 
 黒いリボンが縁取られて、漆黒の黒髪と相まって、ロゼリアの美しさはさらに際立っていた。
 
 皇太子にエスコートされ、舞踏会会場に入った途端、大勢の好奇の目にさらされて顔を上げるのもつらくなった。

 ……あの令嬢はどちらの方かしら?見かけないわね。
 ……それにしても美しい。皇太子がなぜエスコートをしているのだ?

 皆がひそひそと話しているのが聞こえてくる。

 ワルツの音楽が流れてきて、ステージの中央に皇太子がロゼリアの手を引いていく。
 
 2人は流れるように踊り出した。

 皆、2人の見事なダンスに見惚れている。

 「ロゼリア、どの口でダンスが苦手だと言っていたのかな。君には本当に驚かされてばかりだ。」

 「侍女と特訓したかいがありました。今のところはなんとか踊れております。皇太子様のリードがお上手ですから。」


 
 
 
 
 
 
 
 
 
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