王子は香水姫を逃さない
壁際に立つアーサーは、皇太子がロゼリアをエスコートしてくるとは知らなかった。
着飾ったロゼリアの美しさは言葉に出来ないほどで、今も皇太子と踊る姿を見ると、胸が苦しくイライラしてしまう。
差し出されたシャンパンを一気飲みして、グラスをギリギリと握りしめた。
皇太子には、他国の姫と結婚の噂がある。
エセンと同じようにこの国に姫を人質のように嫁がせようとしている隣国があるのだ。
それなのに、ロゼリアに執着している皇太子をアーサーは苦々しく見つめていた。
「アーサー様。彼女はお知り合いのようですね。それ以上かな?」
横には、ピアースが来ていた。目は中央の皇太子に注がれたままだ。警備をしながら会場を回っているのだ。
「本日はアーサー王子の歓迎の意味も込められた舞踏会です。そのようににらんでいてはいけませんよ。」
ピアースはアーサーのロゼリアを見つめる目が他の人と違っていることに気づいていた。
普段は冷静沈着な王子だが、皇太子と彼女を見つめる姿はむき出しの感情がビリビリと周りにも伝わっている。