王子は香水姫を逃さない
アーサーに一目惚れしたといって、王に婚姻を願い出たと、本人からこの間聞いたばかり。
そんなことを言われても、アーサーは全くその気がなかったので、少し冷たいくらいの対応をしたのだが、効果がなかったようだ。
「ピアース殿。私にも譲れないものがある。そのうちの1つが彼女なのです。」
ダンスを終えた2人が王と王妃のもとに挨拶へ行くのを見つめながら、アーサーはつぶやいた。
「皇太子は貴方とのことを気づいていないようだ。他国の正室との縁談が先にまとまれば勝機もあるかもしれませんが。この話は聞かなかったことに。」
ピアースは皇太子が王様との謁見が終わったのを見ると、そちらに移動した。
ロゼリアは視界にアーサーが目に入ったが、怖くて顔を見ることができなかった。
謁見が終わると、皇太子と離れ、いったん化粧室へ行きたいと言って、会場を離れ広い廊下を歩いている。
疲れもあり、ぼうっとして歩いていたら、急に左腕を引かれて、部屋に連れ込まれた。
大声を出しそうになったとき、嗅いだことのある香りに抱きしめられた。