王子は香水姫を逃さない
まさか、それをシルヴィア姫に見られているとは2人とも全く気づいていなかった。
アーサーと踊りたかったシルヴィアは、ピアースと話している彼を見ながら、終わったところで声をかけようとした。
彼が広間を後にしたので、付いてきたのだ。
まさか、入った部屋にロゼリアを連れ込むとは想像もしていなかった。
ロゼリアがエセン出身であることも、城下にいることも知らなかったので、どこの令嬢かといぶかしんでいた。
お兄様と踊っていたあのものが誰なのか。シルヴィアはじっと後から部屋を出たロゼリアをにらんでいた。
広間に戻ったロゼリアは、皇太子に呼び止められた。
「ずいぶん探した。具合でも悪くなって休んでいるのかと心配したよ。大丈夫かい?」
先ほどの名残で頬を赤く上気させていたロゼリアを見て、熱でもあるのかと皇太子は勘違いした。
「いいえ、大丈夫でございます。ご心配おかけして申し訳ございません。本日はありがとうございました。そろそろ退出いたします。」
「戻ってきたばかりではないか。少し付き合ってくれ。」