王子は香水姫を逃さない

 ロゼリアを離したくない皇太子は彼女の正面に立った。
 そして、じっと彼女のデコルテのラインを凝視した。先ほど踊っていたときには見られなかったものが付いている。
 どういうことなんだ。これは……。
 
 「姫、先ほどはどちらに行っていたのだ?どこかで休んできたのか?」
 「……はい。化粧室に行った後、外の空気を吸いたくて、少しベランダから外におりておりました。」
 それは嘘だな。とは返事はしなかった。
 
 皇太子は彼女を配下に探させた。バルコニーからベランダ、外まで報告を受けていた。
 彼女が誰かと会っていたことは、首筋に残る所有印を見れば間違いないだろう。探らせねばならないと目を光らせた。
 
 「そうだ、主賓のアーサー王子に挨拶へ行こうか。店に最初行ったとき同行していただろう。覚えているかい?」
 ロゼリアは、一瞬目を泳がせてぎゅっとつむると、動揺しないように心を持ち直して皇太子を見た。
 「はい。もちろん、我が国の王子ですので、存じ上げております。」
 
 「顔見知り程度かな?」
 「もちろん、何度かはお話させていただいておりますが……。」
 
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