王子は香水姫を逃さない
「ロゼリア、私の妹姫シルヴィアだ。」
「初めてお目にかかります。ロゼリアと申します。」
「まあ、そうだったの。我が国では見かけない顔だったから、どちらの令嬢かと思えば、エセンの方だったのね。商いをしにきたなんて、貴族らしからぬことね。伯爵家というのは大変ね。」
皮肉を述べて扇で口元を覆い、嘲笑している。
「アーサー。訓練はどうだ?ピアースからはよくやっていると聞いているよ。」
「はい。我が国の剣術との違いを見ながら、新たに学ぶことが多く、勉強になります。」
「それは何よりだな。もうすぐ近衛隊の謁見式と模擬試合もある。楽しみにしているよ。」
挨拶を交わし、アーサーとシルヴィア姫から離れると、皇太子が小声でつぶやいた。
「シルヴィアはアーサーとの結婚を父王に願い出たらしい。どうなるかな。」
ロゼリアは動揺して、立ち止まってしまった。
そんな彼女を皇太子がじっと見つめていることに気づかなかった。