王子は香水姫を逃さない
 
 「殿下、何を言っているのですか。」
 キースは大声を出してしまった。
 
 「エリン、何かあればロンを帰します。頼むわね。」
 エリンは、守護動物であるロンとロゼリアとの関係も分かっていたので、すぐにうなずいた。
 
 「見ろ、キース。エリンはとても気が利くぞ。お前もエリンと二人にしてやるんだから感謝しろ。」
 「殿下。わかりましたよ、絶対に遠くへ行かず、周囲への注意は怠らないでください。何かあれば笛を鳴らしてください。」

 ロンに鞍をつけ、アーサーと一緒に馬を引きながら裏山へ上った。
 「ここから林を横切って走ると丘が見えてくる。ロゼリアなら少し林道でも大丈夫だな。」
 
 ロゼリアの乗馬技術を知っているアーサーは彼女を見ながらにっこりと笑った。
 昨日と違い、落ち着いた普段通りのアーサーに戻っていた。
 二人は馬に乗り、駆け出していった。

 バージニアの丘は、エセンの丘よりも標高は低くなだらかだが、広い。風も穏やかだ。
 2人で馬を木に繋ぎ、腰を下ろした。

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