王子は香水姫を逃さない
 
 皇太子を名前で呼んでいた様子を見ても、親しい間柄なのは見て取れた。
 「今日は、たくさん来賓の方がおられるのでしょうから、私などが来る場ではないと思うのですが……。」
 
 「模擬試合の最後に皇太子も出場するようだ。君にいいところを見せたいのだろう。」
 「アーサー様も試合に出るのですよね?」
 「もちろんだ。キースもね。」
 「そうですか。怪我だけはなさらないでくださいね。私は殿下が剣の達人なのは知っていますから。」
 
 私の前で良いところを見せようとして、怪我されたらと心配で、一応釘を刺した。
 苦笑いをしたアーサーは、私の髪をなでた。
 「わかってるよ、我が姫。私の目的は別だからね。」
 
 意味深な笑みを浮かべるアーサーをじっと見つめると、大丈夫というように、抱きしめられた。
 キースがお時間ですという声が外からして、アーサーは出て行った。

 時間になり、競技場へ案内された。
 
 中央にはバージニア王族関係者、その周りに他国の貴賓席がある。
 
 その隣がこの国の貴族関係者だ。近衛隊の家族が端のほうにいる。
 子供もいる。
 
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