王子は香水姫を逃さない
 右の円にキースがいた。
 左の円にアーサーがいる。
 アーサーは最後に並んでいる。

 エリンが「キース様……」とつぶやいた。
 キースの順番が来たのだ。
 「エリン、大丈夫よ。キースは強いもの。知ってるでしょ。」
 エリンは返事もしない。手をぎゅっと握りしめて、キースを見つめている。
 私は安心させようと、エリンの膝をたたいた。
 
 キースは勝った。勝つと、そのまま残り、次の対戦者と負けるまで戦うのだ。
 2番目に出てきてから勝ち続けて、4番目に出てきたノートン隊長の息子との試合に負けた。僅差だった。
 
 エリンはほーっと息を吐き、涙を浮かべていた。
 キースは挨拶した後、アーサーを見て、会釈した。
 ノートンの息子は最後まで残った。
 王様がノートン隊長にさすがだなと声をかけると、隊長はありがとうございます。と返事をしている。
 
 左の円の試合も続いていた。アーサーの番が来た。
 アーサーの相手は、ピアース隊長だった。
 
 「隊長、手加減しないで来てください。」
 「こちらに来て、2ヶ月。王子の上達ぶりを拝見するとしましょう。」

 皇太子をはじめ、皆がこの試合に注目した。
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