王子は香水姫を逃さない
周囲のかけひき
アーサーは、一瞬口ごもり、意を決して話し出した。
「……彼女がバージニアに来ることは聞いていなかったのです。私に内緒で商いを理由に来ていたのを、あのとき初めて知りました。彼女の素性が明らかになることは、望んでいない可能性もあり、知らぬふりをしたのです。婚姻をしないで国に戻ると伝えて別れましたが、彼女は信じてくれていなかった。ただの伯爵令嬢でないことは、皇太子様もおわかりでしょう。彼女は自分の考えを曲げることはしません。皇太子様のご正妃には、公爵令嬢でもなく、伯爵令嬢でしかない彼女は身分的にも難しいかと思います。」
「……どの口がそのようなことを言うものやら。自分なら釣り合うとでも。」
「私は第二王子。国を継ぐのは兄です。正妃を誰とするかは基本私の判断に任されています。」
二人はにらみ合ったまま、冷たい空気が流れた。
「とりあえず、今日のところは、話し合いはこれまでとしよう。こちらも考えをまとめる時間が必要だ。そなたも父王に報告の必要があるだろう。私も今日の件でエセン王に礼を言わねばならない。そなたの父王と話し合う必要がありそうだ。それからだな。」