王子は香水姫を逃さない
 やはり、アーサー様とのことはシルヴィア姫から漏れているようね。
 「先ほど、シルヴィア姫にも申し上げましたが、私にはそのような資格や身分もありません。皇太子様の正室にはもっと高位の姫がふさわしいでしょう。私は商いや馬の世話をするような娘です。」
 
 「アーサー王子とのことは、拒む理由ではないのか?」
 「……。」
 「まあ、答えなくてもその顔に書いてあるがね。」
 「では、正直に申し上げます。私の心はすでに決まっております。アーサー様が望んで下さらなくても、他の殿方には嫁ぐ気持ちはございません。」

 「シルヴィアにとられてもいいのかい?」
 「アーサー様にお任せしておりますが、それについてはエセンとの協定が関係しておりますので、私の口から何も申し上げられません。」

 皇太子は、両手を上げて、笑い出した。
 「君は、ただの姫ではないね。どうやらまだ何か企んでいるようだ。アーサー王子の条件以外にも何かあるようだな。」
 「王子様の条件とは?」
 「知らぬふりはしないでいいよ。」
 「いいえ。知りません。」
 「婚姻破棄どころか、君を渡さないと、私に、王の前で啖呵を切った。」
 ロゼリアははっとして、顔を上げた。
 「というか、君を娶るつもりだとね。つまり、私に渡さないということだよ。身分を理由にするならおかしいよね。」
 皇太子は、ロゼリアの本心を聞き出そうと、揺さぶるように言葉を重ねてきた。
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