王子は香水姫を逃さない
 私もエリンとは姉妹のような関係性だと思っている。
 下宿先の人とも、身分を考えずにお付き合いするつもりでいる。
 
 「それで、商品はどうする。いくつか作ったものを持って行くのだろう?」

 「はい。すぐには、商品を作る余裕は多分ないので、こちらであらかじめ多めに作っていきます。」

 「ひとつ約束してくれ。絶対に無理をしないこと。これ以上無理だと思ったら、意地を張らずに帰国すること。手紙は必ずすぐに返事を書くこと、それから……身体を何より大切にすること。」

 優しい目が私を包む。お父様の愛を感じずにはいられない。
 泣きそうになったけど、明るくごまかした。
 
 次の日から、私は香水や化粧水、石けん、ポプリなどを多めに作り始めた。
 今までは、少しづつ作っていたが、バージニア行きが決まった今、急がねばならない。
 
 アーサーは、おそらく今月末までにあちらに出立するだろう。
 彼も今は公務や片付けることが多く、出発まで会えない。
 
 かえって良かったかもしれない。寂しいと考える暇もないくらい忙しいのだ。
 私も、出立までにやることが山積みだ。


 
 
 
 
  
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