王子は香水姫を逃さない
「心配するな。お父上のサミュエル伯爵にもご了解いただいている。」
私は、驚いて紙面から顔を上げた。目の前にあるアーサーの笑顔を見たら、何かがこみ上げてきた。
気づいたら泣いていた。
アーサーは私をぎゅっと抱きしめて、黒髪にキスを落とすと背中をなでてくれた。
「もう、誰にも渡さない。公に君は私の妃となるのだ。」
「……夢じゃないんですよね?」
「もちろん。父上を説き伏せるのに時間はかからなかったが、交際しているのを内緒にしていたから驚かれたけどね。」
「……うれしい。ありがとうございます。」
「さあ、半刻時に王様と王妃様、皇太子に謁見の申し入れをしてある。一緒に行こう。」
「はい。」
謁見の間に二人で入ると、正面にバージニア王、王妃が並んで座っていた。
横にはノートン隊長。一段下がった右側に皇太子が座っている。横にはピアース隊長がいる。
二人で前に進むと正式な礼をした。
「アーサー王子。今日は、ロゼリア姫も同席を希望とのことだが、エセンとの同盟条件についてだな。彼女は王室関係者ではない。同席させる必要があるのか。」