王子は香水姫を逃さない
 「ロゼリア、お答えするんだ。」
 アーサーが小さい声でうながした。

 「申し上げます。アーサー様の政略結婚の代わりとなる同盟条件に香水販売を加えられたら、と思っておりました。故に、エセン王の許可なく、他国での販売をしました。許可を仰げば下りないことは想像できました。それでは、バージニアでの有利な条件にならないと思ったからです。エセン王のお叱りは覚悟しておりました。」

 バージニア王は、ロゼリアをじっと見つめ、微笑みながら答えた。

 「それはつまり、最初からアーサー王子に自分以外の姫との結婚を阻止したいという気持ちからか?」

 「申し上げます。アーサー様とは、心を通わせる間柄でした。こちらの国に来ることは婚姻の条件があったからなのも理解していました。アーサー様は待っていろとおっしゃりました。もちろん信じていましたが、私ができることをして、少しでもアーサー様のお役に立ちたかったのです。」

 すると、王妃が立ち上がって拍手をした。
 「素晴らしいわ。ロゼリア姫。女として、尊敬します。なかなか出来ることではない。エセン王のお叱りがあれば、自分の身がどうなるかわからなかったのに。それでも、アーサー王子を守りたかったのね。」
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