王子は香水姫を逃さない

 広間を出ると、ピアース隊長がアーサーを呼び止めた。
 「良かったですね、王子。譲れないものを守り通りましたね。ご自身の力でここまでなさるとは、皇太子が可哀想でした。」
 
 アーサーは、かぶりを振った。
 「……いえ。おわかりのはず。ロゼリアの策に助けられたのです。私だけの案では前回のようにはねのけられていた。」

 「そうですね。そう考えれば、皇太子も貴方への嫉妬が減るやもしれません。でも、逆にのがした魚が大きいと気づくかな?」
 
 「隊長に教えて頂くのもあと少しになります。よろしくお願いします。」

 二人はがっしり握手をすると別れた。
 
 一週間後、無事、両国の間で条約が締結された。

 その際、エセン王がバージニアにわざわざ来られた。
 今までの両国の関係を変えることやエセンの王族魔力については外に漏れると効力が失われる危険もあり、バージニアでも王室を含め、必要な者のみが知ることとし、国王同士で密談のうえ、詳細を決定した。

 エセン王に、直接拝謁する機会をもらった。
 今回の騒動に関しては、販売をエセンで最初にしなかったこと、本来なら降格処分だったことなどお叱りを受けた。

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