もう一度あなたに恋したときの処方箋
残念な過去
「淫乱なオンナ……」
いきなり呟かれた言葉に、私は頭の中が真っ白になった。
ずっと憧れていた先輩からそんな酷いことを言われたなんて、信じられなかった。
***
どうしてこんなことになったのだろう。
私は大学のフットサルサークル恒例の夏合宿にきていただけなのに。
私、篠原鞠子は、地方から東京の大学に進学してきてまだ数カ月。
都会の生活に慣れていないし、垢抜けてもいない平凡な女子大生だ。
田舎町から脱出できたことが嬉しくて、東京に引っ越してきてすぐに髪は明るめの茶色に染めた。
高校時代はお洒落と縁がなかった私は、今夜は少し派手な色のTシャツに短パンという動きやすい恰好をしている。
周りの女子たちもだいたいは同じような服装だ。
幼馴染で親友のエリちゃんもこの大学に合格していて、同じフットサルサークルに入っている。
というより、エリちゃんに強引に誘われてサークルに所属したようなものだ。
私たちが宿泊しているペンションは、会員の誰かが親の力でまるっと借りあげた大きめのログハウス。
この辺りは高級別荘地で有名なところだ。
近くにはフットサルコートが四面もあって、強化練習にはピッタリの場所だ。
一週間の合宿には、男女のフットサルサークル会員のほとんどが参加している。
秋には都内でいくつか大会があるし、サッカー経験者が多いからサークル活動とはいえけっこうハードな練習だった。
やっと明日は東京に帰るという最終日の夜。
解散式とは名ばかりのバーベキューパーティーになってしまった。
開放感があるからか、少しばかり羽目を外したメンバーばかりが目について私はオタオタしていた。
新入会員は飲み物を配ったり、悪酔いした先輩の介抱をしたりするのが役目らしい。
私もお世話をしていたが、初めての雰囲気に戸惑ってもいた。
そもそもメインは解散式だったはずなのに、いつしか飲み会になってしまってお酒を飲み過ぎた先輩たちは女子会員を口説きまくっているのだ。
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