もう一度あなたに恋したときの処方箋


アコンチャさんと部長はすでに仕事の話は終わっていたらしく、ご機嫌で帰っていった。
私は岡田部長に残るように言われてしまい、そのまま仕事の話しをすることになった。

部長曰く、スペイン語の出来る社員を一時的に事業本部へ移動させて、あるプロジェクトの手伝いをさせたいらしい。
具体的な仕事内容も分からないのに、異動まで仄めかされた私はパニックだ。

「ですが岡田部長、この会社には外国語の堪能な方大勢いますよね。私なんか……」

「いや、いろんな州の方との交流はスペイン語の方が話が早くてね。大都市より、周辺のワイナリー関係者との商談があるから、無理なく会話や通訳が出来る社員を探してたんだ」

「はあ。で、でも私にはムリです」

オタオタしながら断るのだけど、岡田部長は受け入れてくれない。

「企業秘密も含まれるから、外部の人より社員がベストでね」
「でも、私はシステム管理部ですし、営業とかはチョッと苦手で」

社内ではえりちゃん以外には男性が苦手だといいうことは隠している。
事実アコンチャさんや岡田部長は大丈夫だから、正直に話しても信じてもらえないだろう。

だけど若い男性社員と上手くいくとは思えないから、この仕事は無理だ。
私が岡田部長を納得させられる理由を考えていたら、突然ノックもなしにドアが開いた。




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