もう一度あなたに恋したときの処方箋
ただしチョッと付き合うと、彼女たちは憲一に結婚を迫ってくるのだ。
(仕事より私を一番大切にしてくれって言われてもな)
憲一の母は、彼が中学生の頃に離婚して実家に帰った。もちろん憲一を連れてだ。
その後すぐ父は再婚したが、二歳下の半分血の繋がった弟がいたことがわかった。
どう考えても、母と結婚して間もない時から父は浮気していたのだろう。
大人になってから父がかなり女性関係で派手で、浮気を繰り返していることを知った。
母や再婚相手、その他にも泣かされた女性がいたことだろう。
自分にもその血が流れていると思うと、つい女性との関りを避けてしまった。
父は義弟だけを可愛がっていたから、憲一は面会という形ばかりの親子関係もどうでもよくなってしまった。
(あんな人間にはなりたくない)
高潔であろうとすればするほど、冷めた目で女性を見る癖がついてしまっていた。
だから憲一に関心もなさそうだし媚びた表情を見せない篠原鞠子との出会いは逆に新鮮だった。
(岡田部長もどうやら気に入ってるし、プロジェクトの役に立ってくれればそれでいい)
仕事さえできれば十分だと、その時の憲一は考えていた。