もう一度あなたに恋したときの処方箋
定例の飲み会の日、私は少し遅くまで仕事をして周りの目を誤魔化していた。
メンバーが店に行く時間を見計らって、そのあとに帰宅する作戦だ。
そろそろかなと思ってロッカールームに向かっていたら、岡田部長と高木さんが前方から歩いてきた。
「お疲れ様です。お先に失礼します」
軽くお辞儀をしてふたりから遠ざかろうとしたのに、岡田部長に声を掛けられてしまった。
「あれ? 篠原さんは今夜行かないの?」
高木さんは怪訝な顔をしている。
「え? 今夜? もしかして篠原さん、俺たち同じ大学だったのか」
「高木君、知らなかった? 彼女は僕たちの後輩だよ」
部長が余計なことを言ったものだから、帰りにくくなってしまった。
「チョッと、用事があって」
小さな声でボソボソ言ったら「俺も忙しいから少しだけしか顔を出せないんだ。一緒に行って、さっさと帰ろう」と、高木さんにまた強引に連れていかれることになった。
「あ、でも……」
「いいから、行くぞ」
大柄な高木の後をあたふたとついて行くしか選択肢はなかった。