もう一度あなたに恋したときの処方箋
「なら、教えて欲しい。さっき君が言っていた言葉。あれはどういうことなんだ?」
高木次長は、鞠子と佐藤の関係が聞きたいという。
「さっきの?」
「正樹を『屑』って呼んでなかったかい?」
「あ~。あれは……」
鞠子の許可なしに、あの時のことを正直に高木次長に話していいのだろうか。
私が迷っていると、次長は話しを続けてきた。
「アイツは俺の義弟なんだ。いったいふたりなにがあったのか、君なら客観的に話してくれるだろう?」
佐藤が高木次長の義弟とは初耳だった。
驚いている場合ではない。私にとって鞠子を傷つけた佐藤は敵なんだと思うと、そのお兄さんだという次長に真実を話しにくくなってしまった。
「俺は知らなくちゃいけないと思っている」
「話せることと、話せないことがあります。それでもよろしいですか?」
「頼む。少しでも聞かせてくれ」
高木次長の真剣な表情を見て、私は彼を信じることにした。
あの夏のフットサルサークルの合宿で、佐藤正樹が鞠子を納戸に連れ込んだ過去を正直に話した。
「佐藤正樹が鞠子にしたことは許せません。それに、あなたが言った言葉も鞠子を酷く傷つけました」
あれから鞠子がどれだけ苦しみながら生きてきたのか、高木次長には全てを知って欲しかった。