もう一度あなたに恋したときの処方箋
通いあう気持ち
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「あの時か……思い出した」
職場で見た長い髪を下ろした篠原鞠子と、正樹に押し倒されて長い髪が畳に広がっていた女の子が重なった。
あれは女の子の方から正樹を誘ったんだと思い込んでいた。
いや、そう決めつけたのだ。
「佐藤正樹が鞠子にしたことは許せません。それに、あなたが言った言葉も鞠子を酷く傷つけました」
日下絵里の冷たい言葉は、俺の心に突き刺さった。
あの時は思わず『淫乱なオンナ』と口に出してしまったが、その女の子はとても魅力的だった。
自分は父親とは違うと言いながら、彼女の姿を見たら自分も男だと自覚してしまった。
それを認めたくなくて、義弟を庇うつもりはなかったが、トラブルは女の子のせいにしてしまった。
あの時は『じゃれてたんじゃありません! この人に無理やりされたんです!』と言ってたのに無視してしまったんだ。
まさかと思ったし、正樹の『彼女とじゃれてた』と言う話を信じた。いや、信じようとしたんだ。
俺の言葉が彼女を深く傷つけていたなんて、離してくれるまで知らなかった。
俺は彼女になんて詫びればいいのだろう。