もう一度あなたに恋したときの処方箋
それから
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憲一はレセプションの打ち合わせがあるため、岡田部長と会場になるホテルに来ていた。
仕事の話が終わってから、ホテルのレストランで部長と昼食をを取ることになった。
「君に言ってなかったかな? レセプションに篠原君のご家族も出席されるんだよ」
食事中にいきなり、岡田部長が言いだした。
「ワイナリーと酒蔵の関係者としてリストに名前はありましたが、当日いらっしゃるとは聞いていませんでしたが」
高木は飲んでいたミネラルウォーターでむせそうになりながら言った。
「ボクがお呼びしたんだよ。吉日にはいいことを重ねるもんだよ?」
今日も岡田部長はニコニコ顔だ。
機嫌よさそうに話しているが、鞠子の家族の出席が『いいこと』と言われても憲一にはさっぱりわからない。
どうやらタヌキ親父がとんでもないことを企んでいるというのは、なんとなく伝わってきた。
「吉日とはどういう意味ですか? レセプション当日は確かに大安ですが」
「プロジェクトの成功のために大安を選んだんだよ。だから君も篠原鞠子さんのご家族にご挨拶した方がいいと思って」
今回の仕事の件で鞠子の家族へ挨拶をする必要があったかと考えるが、どうしてもわからない。
「なんのことですか?」
「だって君、結婚のご挨拶しなくちゃ」
「はあ? 俺がですか?」
「え? だって、社内のみんな噂してるよ。君たち婚約したんでしょ」
岡田はあたり前のように話しているが、憲一には初耳だった。
「噂……? 婚約?」