もう一度あなたに恋したときの処方箋
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お姉ちゃん夫婦は、マドリードでレストランやバルをいくつか経営している
私が合宿で男子学生に酷い目にあわされかかったことを話すと、意外にもお姉ちゃんは冷静だった。
「気が強いのと、力が強いのは違うんだよ。あんたは、女の子。どんなに気が強くたって男の子の力に勝てるわけがない。学習したね」
確かにひとつ学んだけど、大きなおつりが付いてきた。
あの日から、私は男の人が怖くなったのだ。
もともと叔父夫婦や従兄弟たちのいる祖母の家では、居候だからと遠慮して暮らしていた。
幼い頃も母子家庭だったから、父親との交流なく育った私には男の人に対しても免疫がなかった。
たった一度の経験で、これまで以上に男の人の視線とか体臭とか、そばに近付いてこられた時の熱量とか全てがダメになった。短時間なら何とか自制心が働いて耐えられたが、長時間になると気持ちが悪くなる。
一度の経験でこんなふうになってしまったのはショックだった。
お姉ちゃんがカウンセリングを受けさせてくれたり、大学の休暇ごとに気分転換だと言ってスペインに何度も呼んでくれたりした。
お姉ちゃんのおかげで、少しずつ私は落ち着きを取り戻せた。
スペイン語は自然と上達し、お店のお客さんと会話出来るまでになった。
小さな男の子やお年寄りは大丈夫だけど、若い男性が苦手なことだけは残念ながら変わらなかった。